囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。




 だからこそ、ラファエルに相談したかったが、彼は忙しい。
 ぐるぐるとその思考だけが頭の中を巡って、どうしていいのかわからない。

 妖精の姿で者を書くのも始めは大変だったが、ラファエルが持ち物を小さくしてくれた。(もちろん夜になれば戻るようになっている)そのため、机の上にまた小さな机を置き、そして小さな紙とペンで執筆をしている。この姿を元の世界の人達が見たら、驚くだろうなと思ってしまう事もあった。


 「さ、今日は童話を書き上げるわよ。ブレーメンにしようかしら、赤ずきんもいいし。あ、コッペリアとか白鳥の湖もいいな。まぁ、バレエの作品だけど」


 物語の事を考えると、下がっていた気持ちも少しずつ戻ってくる。
 今は、メイナやホープを楽しませることだけを考えよう。
 そう思い、朱栞はまた小さな指で小さなペンを握った。

 それからというもの、朱栞はこの世界で、自分が伝えた物語を楽しむ人の姿を想像するだけで、長い間集中して作業を行えたのであった。



 


 
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