囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
玄関まで彼を迎えに行くと、「シュリっ!」とホールに声が響いた。この白の入り口はとても広い。ダンスパーティーでも出来てしまうのではないかと思うほどだった。そんな場所で、名前を呼ばれると少し気恥ずかしくもあった。
「おかえりなさい、ラファエル」
「シュリが出迎えてくれるなんて初めてだね!すごく嬉しいよ」
そう言うラファエルはシュリに近づいて、頭の後ろに手を伸ばし朱栞を引き寄せて、抱きしめてくれる。そんな様子を城の者たちは、頬を染めたり、視線を逸らしたりしながたやり過ごしていたが、ラファエルの後ろに立つリトはいつも通り無表情のままだった。
だが、そんな事を主栞が気にしている余裕はなかった。
彼に触れた瞬間に、朱栞はわかってしまった。
先程恐怖を感じた凍えるように冷たい魔力は、ラファエルが発したものなのだ、と。先ほどの魔力と全く同じものがラファエルには微かに残っていた。普段とは違った魔力の雰囲気に朱栞は戸惑ってしまう。そして、怖さから自然と体が震えてしまう。
それを気づかれないように、朱栞はゆっくりと彼から離れた。顔を下に向けたせいもあってか、ラファエルは何も言わない。きっと恥ずかしさから離れたのだ、と思ったはずだ。
「ご、ごめんなさい。……いつもはあまり気づかなくて、今日は魔力を感じたの」
「……あぁ。だから、俺の事を妖精の眼で見ていたのか。どうしたのかな、と思ったよ」