光の差す暗闇で私は音を奏でたい



毎日のように、言われ続ける影口。




皆からの冷たい視線。





今でも鮮明に覚えてる。






”ねぇ、聞いて!あそこにいる如月幸音。また県のコンクールで一位だったんだって!”




”え~また如月幸音が?これで何回目よ”





”そんなの、如月のお母さんのおかげでしょ?プロのピアニストの娘だからって業界からちやほやされてるんだろうね。本当にムカつく”





”庶民の気持ちなんて分からないんだよ。努力なんてしなくても、如月さんは簡単に一位取れちゃうんだから”





”本当に早くこの業界から消えてくれればいいのに”







思い出せば思い出す程、たくさんの影口が私の脳内に再生される。






あの場所には、私の味方なんて一人もいなかった。




知らないフリして、ただ平然と真面目に授業を受ける事だけに集中していたけれど……。





でも、ある日限界が来たんだ。






もう、ここにはいたくない。何も聞きたくない。私のピアノを好きでいてくれる人がいないのなら、いっその事コンクールなんて出たくない……と強く思ってしまったのだ。





そして私は、公立の学校の入試を受けた。





今通っている学校は、県内で一番の難関校だと言われているが、あんな場所にずっといるのと比べれば、そのための受験勉強なんてすごく楽なものだった。





だから、合格通知を貰った日はものすごく嬉しかったんだ。





「私は音ヶ崎で学んだんだ。地位が高いというだけで周りから嫌われる。それなら、いっその事身分を隠して過ごす方が楽なのだと思った。だから私は、少しだけ変装して学校に通ってる」





……皆に嫌われたあの日から、私の人生は一変した。今まであった楽しい出来事全てを忘れてしまうくらいに。



もう二度と、あんな事にはなりたくない。大勢の人に嫌われるのは、もう嫌だから。



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