光の差す暗闇で私は音を奏でたい
「以前のお嬢様は、いつも笑っていました。どんな事にも興味を持ち、積極的に行動をしておりました。ですが、最近は浮かない顔ばかりしているように見えます」
……遥貴さんは、今もずっと私の事を心配してくれていたのだろうか。
「いいよ、遥貴さん。昔の私の事なんて……私は、確かに前みたいに楽しそうには見えないかもしれない。だけど……」
私は一息ついてから、遥貴さんの方を見て少し口角を上げた。
「今は、平気だよ。悲しかったあの頃と比べたら断然、今の方が私は好きなの」
「お嬢様……」
「だから、そんなに心配しないで?私は大丈夫だよ。人と関わるから、皆に嫌な思いをさせてしまうんだ。それなら、一人で過ごしていた方が、相手にとっても自分にとっても良い事じゃない」
これは本心だ。本当にそう思っている。あの頃は、自分が虐められたから人との繋がりを避けた。だけど、今は私にもいけない部分があったんだと思うから……
だから、もう自分から人との繋がりを求めようとしないって決めたんだ。
「じゃあ俺は、如月との繋がりを求める」
その言葉に、私と遥貴さんは思わず彼の方を見る。
「要するに、今の如月は自分の事を信用していないように見える。だったら、俺が教えてやる。如月といる事で幸せになる人がいるんだって、証明してやる」
私は目を見開いた。……そんな事を言われたのは初めてだった。
どうしてだろう……胸の奥が少し温かくなったような感覚がする。
彼の言葉は、本当に真っ直ぐだ。
思わず、表情が和らぐ。
「うん、ありがとう。でも、貴方はまだ私の事ちゃんと知らない……だから、証明するなんてそんな簡単に出来ないはずだよ」
「確かに俺は如月の事、知らないことだらけだ。だけど、これから知っていけばいい。それに……あんな素敵な演奏をする奴が、悪い奴だなんて俺はどうしても思えないから」
まだ会って間もないはずなのに、彼は私の演奏を知っているというだけで、私を信用してくれている。