光の差す暗闇で私は音を奏でたい
……翌日、学校に行く支度をしてから遥貴さんの出してくれた車に乗り込む。
昨日は、たった一日で色々とあった気がする……。
「お嬢様、仲良くしてくれる方がいらして良かったですね」
「そう、だね……」
この出会いが、良かったのか悪かったのかはまだ分からないけれど……。
「俺は、お嬢様が学校でも笑っていてほしいです」
いきなりそう言われて、少しびっくりする。
「過去の事は、誰だって変えることは出来ません。しかし、未来は変えることが出来るのです。それなのに、お嬢様は自分の可能性を自分で否定してしまっています」
……遥貴さんの言う通り、私はどこか自分で否定しているのかもしれない。
でも……今の私は、自分に肯定する事は出来ないんだ。
「ですが、まずは誰かを心から信じてみてはいかがでしょうか。そうする事で、お嬢様もきっと自分を大事に出来る時が来るはずです」
遥貴さんの言ってる事は正論だ。本当にそうだと思う。
「遥貴さんの言う通りだと思う。だから……少しだけ、信じてみたい」
私の言葉に、鏡越しに遥貴さんが微笑んでいるのが見える。
「夏向様なら、きっと大丈夫です。彼はきっとお嬢様の心の支えとなってくれるでしょう。俺が言うのですから、どうぞご安心を」
「うん、そうだね」
唯一心から信頼している遥貴さんが言うなら、きっとそうだと思う。それに、小林君は私のピアノを好きだと言ってくれた。
それだけでも、十分嬉しい。
「噂をすれば……彼がお待ちになっておりますよ、お嬢様」
「……えっ?」