光の差す暗闇で私は音を奏でたい
いつも降ろしてくれている公園に着き、窓越しに外を見るとそこには小林君の姿があった。
遥貴さんは、先に車から降りて私の方のドアを開けてくれた。
私は車から降りる。
遥貴さんは胸に手を当てて私に向かってお辞儀をした。
「行ってらっしゃいませ」
「行ってきます」
遥貴さんにそう言って、一歩一歩小林君の方へと歩み寄る。
それに気づいたのか、小林君は下に落としていた視線を私に向け、こちらに歩いてきた。
「おはよ、如月」
「おはよう」
「じゃあ、学校行くか」
「うん」
そう言って、私達は学校の方へと歩き出す。
誰かと登校するのも、何年ぶりだろうか。何故か分からないけれど、心が温かくなった気がした。
「……ねぇ、何で待っててくれたの?」
「えっ?」
私からの急な質問に小林君は少し驚いていた。
「あ、違うの!別に嫌だったからとかではなくて……ただ純粋に、そう思っただけだから」
少し慌てて言う私に、小林君はふっと笑った。
「如月の言いたい事ちゃんと分かってたから、そんな慌てなくても大丈夫だ」
「……うん」
小林君に笑われて、自分のやった言動が少し恥ずかしくなる。
「昨日、如月が言ってたから。いつもあの公園まで送り迎えしてもらってるって。如月と一緒に帰ったから、場所も分かってたし……だから、そこで待ってたら如月と会えると思って待ってた」
「同じクラスだから、待たなくても会えるのに」
「そうだけどさ……俺が一番に如月に会いたかったから」
小林君の言葉に驚いて、思わず彼の方を見る。小林君は、優しそうに微笑んでいた。
……恥ずかしいくらいに、彼は真っ直ぐだから、少し困る。
どういう表情をしたらいいのか、分からない。
私は小林君から目を背けた。