光の差す暗闇で私は音を奏でたい
だけど、そんな事を考えながら弾いてはいなかった。私はただただ、曲を永遠と弾いているだけだった。
「……そっか。私の悩んでいた事って、案外簡単な事だったのね……」
どうして今まで気づかなかったのだろう。
「小林君。今すぐにはまだ無理だけれど、もう少しだけ気持ちの整理がついたら……もう一回ピアノのコンクールに出てみるよ」
私の言葉に、小林君は驚いた表情をした。
「そして、今度こそ皆の心に届くピアノを弾いてみたい」
それが私にとって、一番嬉しい事だから。それが叶うなら、順位なんてもうどうでもいい。
「如月ならきっと出来るさ。……俺、ずっと待ってるから」
「うん」
涼しい風が、私の髪をなびかせる。
今日見た風景は、一人で見ていた時よりもすごく色が澄んでいるように見えた。