光の差す暗闇で私は音を奏でたい

新たな出会い




授業が終わり、休み時間になる。



……名前。どういうタイミングで、言えばいいんだろう。


ずっと考えながら、小林君の席の方を見る。だけど、小林君の姿は見当たらなかった。


仲のいい男子とまたどこかに行ったのかな……行動が早い。




そんな事を考えていると、教卓の前にいた先生が私に声をかけてきた。




「如月ー!ちょっとこの書類を職員室に運んでくれないか?」




「分かりました。運んでおきます」



「ありがとう。助かる」




先生から頼まれた書類は思ったより量が多かった。


……これを、一人で運ぶんだ。



少し無理があると思ったが、引き受けたのは私の方だ。自分で引き受けたものはちゃんとやらないと。



私は書類を持ち上げて、廊下へと歩き出す。



書類は私の頭の高さぐらいまであって、横を見ながら進まなければ前が全く見えない。



……それに、思ったよりすごく重たい。


でも、ここの廊下はほとんど人が通らないから良かった……。



落とさないようにそうっと運びながら廊下の角を曲がった時、誰かとぶつかり持っていた書類が周りに散らばった。




「痛た……」


「あっれ~、如月さんじゃない」




その声に前を向くと、そこには三戸さん達が立っていた。



「あんた、また先生から雑用頼まれてんの?可哀想な子」



「別に、私が引き受けたんだから大丈夫だよ。それと……ぶつかってごめんなさい」



「急に何、いい子ぶってんの?そういうの、本当ムカつく」



原田さんと安藤さんは私にそう言って、私を睨んだ。……私は、本気でそう思っているだけなのに。




「……小林君の前で猫被ってた人達に、そんな事言われたくない」



「はぁあ!?アンタ喧嘩売ってんの?」


三戸さんがそう言いながら私の胸ぐらを掴む。……苦しい。



「……こん、なこと、して……たら、小林君に、本当に……嫌われちゃう、よ……」



三戸さん達をじっと見ながらそう言うと、三戸さんは私から手を離して床に突き飛ばす。
< 29 / 100 >

この作品をシェア

pagetop