光の差す暗闇で私は音を奏でたい
新たな出会い
授業が終わり、休み時間になる。
……名前。どういうタイミングで、言えばいいんだろう。
ずっと考えながら、小林君の席の方を見る。だけど、小林君の姿は見当たらなかった。
仲のいい男子とまたどこかに行ったのかな……行動が早い。
そんな事を考えていると、教卓の前にいた先生が私に声をかけてきた。
「如月ー!ちょっとこの書類を職員室に運んでくれないか?」
「分かりました。運んでおきます」
「ありがとう。助かる」
先生から頼まれた書類は思ったより量が多かった。
……これを、一人で運ぶんだ。
少し無理があると思ったが、引き受けたのは私の方だ。自分で引き受けたものはちゃんとやらないと。
私は書類を持ち上げて、廊下へと歩き出す。
書類は私の頭の高さぐらいまであって、横を見ながら進まなければ前が全く見えない。
……それに、思ったよりすごく重たい。
でも、ここの廊下はほとんど人が通らないから良かった……。
落とさないようにそうっと運びながら廊下の角を曲がった時、誰かとぶつかり持っていた書類が周りに散らばった。
「痛た……」
「あっれ~、如月さんじゃない」
その声に前を向くと、そこには三戸さん達が立っていた。
「あんた、また先生から雑用頼まれてんの?可哀想な子」
「別に、私が引き受けたんだから大丈夫だよ。それと……ぶつかってごめんなさい」
「急に何、いい子ぶってんの?そういうの、本当ムカつく」
原田さんと安藤さんは私にそう言って、私を睨んだ。……私は、本気でそう思っているだけなのに。
「……小林君の前で猫被ってた人達に、そんな事言われたくない」
「はぁあ!?アンタ喧嘩売ってんの?」
三戸さんがそう言いながら私の胸ぐらを掴む。……苦しい。
「……こん、なこと、して……たら、小林君に、本当に……嫌われちゃう、よ……」
三戸さん達をじっと見ながらそう言うと、三戸さんは私から手を離して床に突き飛ばす。