光の差す暗闇で私は音を奏でたい
昼休み。私が学校生活の中で唯一好きな時間。
「はぁー、息苦しかった」
屋上の心地よい風が、私の心を少し楽にさせてくれる。
一人の時間が、一番落ち着く。
目を閉じて、座って寛いでいると、隣からドアを開ける音がした。
振り向くとそこには何故か、転校生が立っていた。
「お前って、同じクラスの……」
その言葉に少し驚いてしまった。
「……よく、覚えてるね」
「それは、お前だけ一人でいたから覚えやすかっただけだ」
彼は私の隣に座りながら、視線をこちらに向ける。
この人、やっぱり変わってる。
普通だったら、自分の方に寄ってきた人達を見るはずだ。
一人でいる人のことなんて、きっとどうでもいいはずなのに。
「……なぁ、お前って名前何て言うんだ?」
突然の質問に、彼の方へと視線を動かす。
だけど、視線を合わせたくなくてすぐに目を背けた。
「……如月、幸音」
「……やっぱり、お前ってピアニストの如月幸音か?」
「そう、だけど」
この人もお母様のピアノが好きだったりするのだろうか。
だから、私に話しかけに来たのかな。
私の母は、音楽業界の中でも特に名の知れる程有名な天才ピアニストだ。
そして、私にピアノ関連の事で近づいてくる人は皆私の母目的だった。