光の差す暗闇で私は音を奏でたい



……少しだけ、分かったような気がする。
私の周りにも、ちゃんと私の事を見てくれている人がいるのだと。




小林君も、彼も温かい人だ。





彼はニッコリと微笑む。





「……如月は、可愛くて優しい良い子だな」




そう言って私の頭を撫でる。




「そんな事ないよ」




「そういう事言って……。そろそろ戻ろうか。もう授業始まってると思うけど。如月は三限教室?」




「うん、そうだよ」





「了解」





彼は私をヒョイっと抱き上げる。




「また、お姫様抱っこ……」





「あれ、嫌だった?」





「皆に見られるから……」





「しょうがないじゃん。この足じゃ歩けないんだから。我慢して」






私は渋々受け入れるしかなかった。彼の足音がコツコツと廊下に響き渡る。




私達はその間、何も話さなかった。






……クラス一組に着き、彼がガラガラとドアを開ける。その瞬間、皆の視線がこちらに向く。





「先生ー!如月お届けに来ました」




「話は聞いてるわ。ありがとう」






先生は彼に向かって少し微笑む。






「輝星君だ!かっこいいー!」





「私もお姫様抱っこされたーい!」




女子の黄色い歓声が教室中に響く。






「ごめんねー?如月は怪我してるから特別なの。分かってね」




そう言って彼がウインクすると歓声がもっと大きくなった。……何か、すごい女子に慣れてるんだな、この人。





「如月、席どこ?」





「窓側の一番後ろの席だよ」





「オッケー」





彼は、私を席まで運んで椅子に座らせてくれた。





「ありがとう」





「どういたしまして」





彼は背中を向けて行こうとしていた時、急にあっ、と声を出して私の方へ振り返る。

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