光の差す暗闇で私は音を奏でたい
「……如月。あのさ、今日の……」
「お嬢様!」
小林君が何か言いかけた時、気づけばいつもの公園が目の前にあり、そこから遥貴さんが走ってきた。
「お嬢様……って、その足どうなされたのですか!?」
「……人とぶつかってしまって、捻挫したの」
「だから夏向様が……。夏向様ありがとうございます」
遥貴さんが小林君に頭を下げる。
「いや、別に大したことじゃないんで。礼なんていりません」
小林君の言葉に、遥貴さんが微笑む。
そして、私の方に視線を戻し、真面目な顔に戻った。
「お嬢様、至急お屋敷にお戻りになるようにとの事です」
「……え、どうして?」
胸騒ぎがした。遥貴さんが真面目な顔をして言ってるということは、もしかして……。
「お嬢様の母君が、さっきお戻りになったようです。お嬢様に伝えたい事があると申しておりました」
思っていた事が的中して、血の気がさーっと引く。どうして、こんなタイミングで……。
「……分かった。すぐ屋敷に戻りましょ」
私は、小林君に車の前で降ろしてもらい、遥貴さんが車のドアを開ける。
「小林君、今日はありがとう。すごく助かった。じゃあ、気をつけて」
「……おう」
小林君は何か言いたげな顔をしていたけれど、私は背を向けて車の中へと入る。
すると、遥貴さんは車を走らせた。
……お母様。
窓から見える夕日は、まるで燃えているように、赤く染まっていた。
……家に着き、遥貴さんの肩を借りながら玄関の扉を開けて広間へと移動する。
そこには、私と同じラベンダー色の、緩いパーマがかかった、懐かしい人がソファに座っていた。
「お母様、ただいま戻りました」
私の言葉に、お母様は飲んでいた紅茶を置き、こちらに目を向ける。