光の差す暗闇で私は音を奏でたい
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「なぁ、如月。一緒に帰ろうぜ」
放課後、彼が言ったその一言で周りがざわつく。
”え?何で如月さんと?”
”私達が一緒に帰りたかったのに”
”ていうか、何で仲良くなってんの?”
私を悪く言う影口が教室に飛び交う。
だから、人との関係は嫌なのに。
彼はそんな事も気にせずに私の前に立つ。
それは、昼休みのあの後がきっかけだった。
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「お前にずっと、会いたかった」
「……え?」
真剣なその瞳に、私は思わず後ずさった。
「何で?」
「お前のピアノの音が好きなんだ。だから、ずっと会って話したかった」
その言葉に、思わず目を見開く。
そんな事、直接言ってもらえたのは初めてだった。
「……貴方は、本当に変わってるね」
「は?何が?」
「……色々と」
そう言って私は立ち上がり、彼に背を向ける。
彼は、知らないのだろうか。私が音楽業界から嫌われてるってこと……。
学校でも家でもそう。
……だけど、そのうち彼もそれに気づく時がいずれ来る。
そうなればきっと、彼も私を嫌いになる。
私は唇をギュッと噛み締めた。
「私、もう行くから」
屋上の扉まで歩き、ドアノブに手をかけた。
「待ってくれよ!俺、如月の事もっと知りたい。ピアノの事も、如月自身の事も」
その言葉に、私は一度立ち止まる。
……どうして彼は、そんなにも私の事を知りたいと思うのか、私には理解できない。
はぁ、と息を漏らす。