光の差す暗闇で私は音を奏でたい
……そして、あっという間に時が過ぎテストも終わりを迎え、終業式が終わる。
残りは八月にあるピアノコンクールだけ。
「もう、一学期も終わったのか。日が経つのが早いなんて感じたのは初めてだな。……特にテスト週間は一番楽しかった」
放課後、教室を出て歩いていると隣にいた夏向がそう呟いた。
「勉強、途中で面倒くさいとか楽しくないって言ってたのに……結局楽しかったんだ?」
「勉強はな。俺が楽しかったのは、幸音の家で、幸音のピアノを聞けて、一緒に過ごせたことだ。遥貴とも仲良くなれたし……」
まぁ、でも今までしてきた勉強の中では一番楽しかったかもしれない、と一言付け加えて夏向は前を向く。
途中で勉強やりたくなさそうな感じ出していたけれど、ちゃんと夏向は最後までやり遂げていた。……そんな事で喜んでくれるなんて、何だか少し嬉しかった。
「でも、夏向が学年一位なのはびっくりしたよ」
「学年一位の幸音に教えてもらったからだよ」
そう、夏向は今回のテスト私と同様で全部満点だった。
それを見た時、私はすごく驚いた。授業中は毎日寝ていて、テスト週間以外勉強していないはずなのに、それだけで夏向は満点を取ったのだ。
……きっと、私が同じ事をしたら満点なんて取れないだろう。
私の家で勉強している間も、私が書いたノートを写しながら時々質問してきたけれど、本当は全部わかってたんじゃないかと思う。
だって夏向は、全然分からないような顔をしていなかったから。……もしかしたら、私の思い違いかもしれないけど。
「そんな事よりさ……もうすぐだな、コンクール」
私が色々考えていた時、夏向がふとそう言った。
その言葉に、はっと我に返り思わず彼の方を向く。
すると、いつからなのか夏向は私を見ていて少し嬉しそうに、優しい表情をしていた。