光の差す暗闇で私は音を奏でたい
今輝星君が呼んでくれなかったら、私はずっと自分の考え事に囚われたまただったかもしれない。
すると、夏向が私の手をギュッと握った。
「そんなに考えすぎなくていい。確かに、結城の演奏は凄いが、幸音だって負けてない。だから、幸音はただいつも通りに弾けばいい。そして、その音に今の幸音の思いを全部ぶつけてこい」
夏向の言葉に、私は目を見開いた。
そして、輝星君も私のもう片方の手をギュッと握ってくれた。
「そうだよ、如月。自信持って。俺達は如月のピアノ、大好きだから。だから、如月の今の全力、舞台の上で皆に見せてあげようよ」
二人の言葉に、私は緊張していた心に一気に光が差した。手を握ってくれたおかげで、だんだんと緊張が解けていく。
……私はいつの間にか、こんなに素敵な人達と出会ってたんだな。
今まで泣けなかったはずなのに、感動して一粒だけ涙を流してしまった。
でも、私の表情は今までで一番の笑顔になる。
「ありがとう。私、頑張るね」
二人は私を見て驚いていたけど、すぐに彼らも笑ってくれた。
そして、コンクール開演の音が聞こえる。
「じゃあ、私はもう行くね。また後で」
「分かった。頑張れよ」
「如月頑張って!俺たちはちゃんと観客席にいるから!」
二人の声を聞いて、私は控え室へと歩き出す。
私は今日、今までの過去を全部良い物に変えてみせる。
だから、お母様待っていて下さい。
そう固く決意して、私は廊下を歩いた。