光の差す暗闇で私は音を奏でたい
~葵目線~
俺は幸音と別れた後、すぐに控え室に入った。
久しぶりに会った彼女は、前より少し大人しくなったように見えた。
……二年前のコンクール。幸音は演奏を終えた後、観客の姿を見て青ざめていた。
自分の演奏で、ほとんど拍手を貰えなかった事が幸音にとって相当ショックな出来事だったのだろう。
それから幸音は、そのまま舞台の上から姿を消した。
あの時の俺は、何故そんな事が起きたのか、その真実を知らなかった。
その時の幸音の演奏は、いつも通り幸音らしい綺麗な演奏だったはずだが、明らかに観客の反応がいつもと違ったのだ。
……だが、音ヶ崎学園で皆から虐めを受けたことが原因だと知った時は、さすがに俺でも驚いた。
俺も音ヶ崎の生徒なのにも関わらず、自分の大切な婚約者に何があったのかも全部知らなかったのだ。
俺は基本、一人でいたから人とほとんど関わらずに過ごしていたため、そんな情報が耳に入ってこなかった。
もし、あの時その事を知っていれば、もっと早く幸音を助ける事が出来たはずだ。
そして、今のように大人しくなる事はきっとなかった。
……けど、あいつは自分の危機を知って、音ヶ崎から出ていって、ちゃんと自分の居場所を見つけられたんだな。
そういう行動力は、本当に幸音のすごいところだ。
壁にぶつかっても、必ず立ち上がってくる……根性のある奴。
幸音の隣にいた二人が目障りだったが、あの二人がいたおかげで、幸音は少し立ち直れたのかもしれない。
そう思うと、アイツらの存在も否定できやしない。
本人達に、礼なんて絶対言わないが。