光の差す暗闇で私は音を奏でたい
自己主張は薄目だが、それがこの曲をもっと引き立てていた。
……この曲は、もしかして私のために弾いているのだろうか。
葵は、曲に乗せている思いが分かりにくいが、私は少しだけいつもと違う感情を乗せているのだと伝わってきた。
そんな事を考えて、葵の演奏に聞き惚れていると、いつの間にか私の隣に葵が立っていた。
「葵……もしかして今の曲、私に向けて……」
そう言いかけると、葵は私の口を手で塞いで自分の口元に人差し指を当てた。
私はそれを見て、目を見開いた。
「……次は幸音の番だ。ちゃんと、舞台の上は温めておいた。だから……お前の気持ち、観客に見せてこい」
葵はそう言って、私に優しく微笑んだ。
「……うん!」
私は前を見て、一歩ずつ舞台の上へと歩いていく。
今日こそ、この舞台上を私の音で虜にしてみせる。そして、また皆に認めてもらうんだ。
私の演奏は、皆に通用するものだって。