光の差す暗闇で私は音を奏でたい
……舞台の中心に立ち、私は観客側の方を見て丁寧にお辞儀をする。
観客席に座っている人達は、予想通り私の事を冷たい目で見ている人が多かった。
でも、その中で夏向と輝星君が私を見て頑張れと合図をしてくれているのが見えた。
そのおかげで、私は心が温かくなる。
……きっと、大丈夫だ。
私は、ピアノの前にある椅子に腰掛けて目を閉じ、大きく深呼吸をする。
……大丈夫。私のありったけの思い、ここで全部晒す。
私は目を開けて、ピアノを弾き始めた。
もう、ピアノの型にハマるのは辞めた。
その型にハマってしまうから、皆は私の事を冷たい目で見下してくるのだ。
それならいっその事、この曲を自分のものにして、会場の皆をあっと驚かせればいい。
私の辛い過去、今まであった全ての悲しみ……それを全部この”悲愴”に乗せるんだ。
私はそう思いながらも、丁寧に音を奏でていく。
このピアノと私の気持ちが一体化して、会場に響き渡っているのが、自分でもよく分かる。
……すごく、気持ちがいいな。
そうして、あっという間に弾き終わる。
私は、もう全部をこの曲に込めた。この演奏で私に後悔はない。
椅子からスっと立ち上がり、舞台の中心まで行って止まり、丁寧にお辞儀をする。
顔を上げると、舞台上にいる人達の表情が驚いているのがよく見える。
その瞬間、今までで一番の大きな拍手が会場を包み込んだ。
……私の気持ち、ようやく皆に届いたんだな。良かった。
それが嬉しくて、舞台上で涙が自分の頬を流れていく。
私はまた、ここに立っても良いと証明されているようだった。
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舞台上から出て、廊下を歩いていると夏向と輝星君が私の所へ走ってきた。