【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。




 「……え? 朱鳥が……?」
 
 野山先生に、そんなことを……?

 「そう。……赤ちゃんを生みたい気持ちがあるのに、この辛さを乗り越える自信がないって」

 「…………」
 
 朱鳥がそんなことを野山先生に言っていたなんて知らなかった俺は、朱鳥のことをまだ何も知らないんだなと実感してしまった。

 「赤ちゃんが頑張ってるって分かってるのに、自分は逃げ出してしまいたくなってしまうって、そんなこと言ってた。……神山先生、奥さんのこと大事だって思うのなら、ちゃんと奥さんのそばにいてあげないとダメだからね?今が一番辛い時なんだから、何も言わなくてもいい。 ただ、そばにいてあげて?」

 野山先生のその言葉で、俺は思い知らされた。俺はまだ朱鳥のことを何も分かってあげられてなかったんだなと。
 朱鳥がそんなに辛い想いをしてるなんて思ってなくて……。朱鳥一人にそんなに背負わせてしまっていたなんて、申し訳無いことをしたと思った。

 その野山先生の言葉を聞いて以来、俺は朱鳥のことを気にかけるようになった。


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