【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。

　わたしは野山先生にそう問いかけた。
　だけど野山先生は、わたしのせいじゃないって何度も何度も言ってくれた。赤ちゃんだって、神山さんの所に来れて嬉しかったと思うよって。

　「……わたし、わたし……」

　「大丈夫よ。……あなたはちゃんと、お母さんだった。いいお母さんだったよ。最高のお母さんだったよ」

　その言葉で涙が止まらなくて、だけど野山先生はずっと背中を擦りながらそんなふうにわたしを慰めてくれた。　
　
　だけど……。こんなことになって思うのは、やっぱり那智さんのことだった。那智さんは誰よりも赤ちゃんが生まれてくることを望んでいた。幸せな家族になろうって言ってくれていた。

　なのにわたしは、わたしは……。那智さんのその大切な家族を一人失ってしまった。那智さんの願いを叶えてあげることが出来ない……。

　悔しくて、苦しくて、辛くて……。那智さんに合わせる顔がない。
　どんな顔をして会えばいいのか、分からない。　那智さん、怒ってるかな？赤ちゃんいなくなって、怒ってるかな……？