【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。
「…………」
俺も何も言えなくて、ただ黙り込むことしかできなかった。
「……赤ちゃんが生まれてくることは、この世のキセキだと思う。でもそれが、当たり前じゃない時もある。……赤ちゃんが出来ても、流産したり、病気になったり、離れ離れになったりとか色々あるから。……だからこそわたしたち医者は、しっかりと患者さんに向き合う必要があるんだと思う」
野山先生のその言葉は、俺の胸にも刺さって、俺も野山先生と同じ気持ちなのかもしれないと思った。……命がある限り、何かが必ず起こる。
「……そうだな」
「医者はどんな時も、患者さんを第一に助けることが仕事。だけど助けたから終わりじゃない。……次に向かうための準備をしてあげるのも、わたしたち医者の仕事だとわたしは思う」
野山先生のその言葉は、まるで俺に向けられているみたいだった。
次に向かうための準備か……。それはまさに、俺たち医者が、患者さんのために出来る最後の仕事なんだと思う。