【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。
「……朱鳥!」
するとその時、那智さんがわたしの方に走ってきた。
「……え?那智、さん?」
どうして……? どうして、来てくれたの……?
「一緒に、帰ろう」
「え……? でも、仕事の方は……?」
「大丈夫だよ。小児科なら、俺がいなくてもなんとか回ってるし」
「……でも、いいんですか?」
「いいんだ。……俺がそうしたいんだ」
「……ありがとう、ございます」
こんな時だからこそ、那智さんに側にいてほしいという気持ちはあった。
那智さんには、わたしの気持ちが見透かされている気がした。
「……え?」
那智さんは、震えるわたしの手を優しく握ってくれた。そしてその手をしっかりと離さないように、ぎゅっと握り直した。
「……帰ろう、朱鳥。俺たちの家に」
「……はい」
ふたりで手を繋いで歩くこの道は、とても長く感じた。……だけど少しだけ安らぎと安心を与えてくれたような気がした。