【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。



 「な、何言ってるんだよ!? 何で急にそんなこと……!?」

 「……わたしは那智さんには、幸せになってほしいんです。わたしよりももっといい人と幸せになってほしいんです。……だからわたしたち、離婚しませんか?」

 「何言ってんだよ! そんなこと出来ない。俺は朱鳥、君のことが……」

 〈愛してる〉きっとそう言ってくれているに違いない。 だけどわたしと一緒にいたら、那智さんはきっとわたしのことが重荷になる。
 きっと面倒になるに違いない。 だったらもう、別々の道を歩んだ方が、わたしたちのためになるのではないか……そう思ってしまう。

 「……本当にごめんなさい。でもわたし、辛くなってしまうんです。……きっとこれからも、那智さんの顔を見る度に、赤ちゃんのことを思い出してしまうと思うから……」

 「朱鳥……。君は本当に、それでいいのか?」

 「……っ……」
 
 いい訳ない。いい訳ないよ……。本当はもっと、那智さんと一緒にいたい。ずっと那智さんのそばにいたい。
 だけどわたしには、その資格がない。 那智さんのそばにいる資格なんて、ないから……。

 
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