【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。


 

 「どうしよ……」

 「朱鳥は、どうしたい?……生みたい?それとも、生みたくない?」

 「うーん……。それがよく、分からないんだ」

 妊娠しているって事実も、まだ信じられないし。それに、もし生むとしたら……。父親だというその人のことは知らないし、何も知らない人の子を生む勇気が、わたしにはあるのだろうか……。

 だけどわたしには、お腹にいる赤ちゃん生んだとして、ちゃんと育てていけるのだろうか……。この子はきっと父親のいない子になってしまうし、そうなると、将来のことを考えた時に……。悲しい思いをさせてしまうかもしれないとさえ思った。

 わたしが妊娠しているこの子は、名前も知らない一夜だけの関係で出来てしまった子で。彼とはきっと、もう二度と会うことだってないはずだ。

 そうなることを考えると、〈生まない〉という選択をする方が、いいのかもしれない。……だけどこの子を堕ろすということは、小さな生命を殺すのと同じだ。……残酷な気もしてしまう。



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