【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。
「あの時は、先に出てしまってすみませんでした。……あの後、大丈夫でしたか?」
そう聞かれても、再会してしまった驚きと緊張、そして罪悪感とで頭が真っ白になってしまい。何も話せなかった。
「……あの、大丈夫、ですか?」
彼は心配してくれているのか、顔をのぞき込んてきた。だけどわたしは逃げるようにして、その場を立ち去ろうとした。
彼に会ったことは幻、幻覚、夢なんだと思うことにした。……なのに彼は、わたしのその腕を掴んで離そうとしなかった。
「……え?」
「どうして逃げるの?……何か、会いたくない理由でもあるの?」
そう聞かれても、答えるわけにはいかなかった。だってわたしは今、彼の子をこのお腹の中に宿してしまっているから。
もう二度と会うわけがないと思っていたのに、まさかここで再会することになるなんて……。信じられない。
「ち、違います……!ひ、人違いです!」
そうやって言えば逃げられるかもしれない。そう思ったのもまた、事実だった。