【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。
③再会したら、その日にプロポーズされました
「待って!人違いなんかじゃないでしょ?」
「…………」
だけど乗り切ることは出来なそうだった。彼にその掴まれた腕、そしてその瞳、その表情。……すべてあの夜に起きた出来事を思いださせるかのような顔だった。
それは紛れもなく、あの時の彼だ。あの夜、何度もベッドの上で抱かれたあの人だ。……忘れもしない。この少し甘いのに爽やかに香るこの香水のニオイ。……あの時とまるっきり同じだ。
そして彼は、わたしのカバンを見て気づいてしまったようだった。……わたしのカバンに付いている、あのマタニティマークのキーホルダーに。
「……少し、話せますか?」
「……え?」
そして彼は、一言だけそう呟いた。
わたしは彼のあとを付いていくと、彼は中庭にあるベンチに腰掛けた。わたしも彼の隣に腰掛けた。だけど会話をするのがこんなにも気まずい。……妊娠しましたなんて言っても、受け入れて貰えるわけはないし、もしかしたら堕ろしてくれと言われるかもしれない。