【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。
「……優しいんですね、那智さん」
「そうですか?俺はただ、あなたのためにそうしたいと思ってるだけです」
「え?」
それは、どういう意味……?
「俺は、あなたを大切にしたい。それは本当ですよ。あなたが俺の子を妊娠しているからとか、そういうのを言い訳にはしたくないんです」
「……那智さん」
那智さんのその真っ直ぐな気持ちが、わたしの心に強く響いた気がした。
「朱鳥さん、俺は……。ちゃんとあなたに、俺自身のことを好きになって欲しいんです」
そう言って那智さんは、わたしの手を握ると、わたしの目を見つめていた。
「俺もあなたのことを、心から大切にしたいという気持ちは本当です。……あなたのことを、ちゃんと好きになりたい」
その言葉はわたしに、わたしのためだけに向けられたもの。だからこそ、嬉しいなって思ったのも、また事実だ。
「……那智さん、遅れますよ?」
「あ、そうでしたね。すみません、行きましょう」