【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。




 「はい。……だからこそ、朱鳥さん」

 「……はい?」

 そして那智さんは、更にこう言葉を続けた。

 「あなたには、生んでほしいです。俺との間に出来た子を生んでほしい。本気でそう思ってます」

 「……那智、さん」

 那智さんのその言葉を聞くと、本当に生んでほしいっていう気持ちが伝わってきた。彼は医者だからこそそう言ったんだ……。小さな子の生命〈いのち〉を預かる大切な仕事をしているからこそ、わたしに本気でそうしてほしいのだと思った。

 「確かに今すぐに答えを出す必要はありません。……だけどこれからは、あなたとお腹の子の未来ではなく、俺とお腹の子の3人での未来を、考えてみてくれませんか?」

 那智さんのその言葉は、胸に響くくらい説得力があって、考えさせられてしまうほどだった。こんなにも胸に響く言葉をもらったのは、久しぶりだった。

 「……はい。分かりました」
  
 「ありがとう、ございます」

 そしてわたしたちは、その後そのまま無言でパスタを食べ続けた。
 

 
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