【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。
「あなたも、もしお子さんに何かあったら、神山先生に診てもらったほうがいいわよ?」
「は、はいっ」
いやいや!診てもらうというか、わたしのお腹にいるのは、そのすご腕先生の子供なんだけど……。
「じゃあ次の診察は来月ね。次は、赤ちゃんの父親と一緒に来てね?」
「……赤ちゃんの、父親……」
赤ちゃんの父親は、那智さんだ。だけど、一緒に来るなんて無理だと思うけどな……。
「そう。 じゃあお大事にね?」
「ありがとうございました」
わたしは診察を終えて病室を出ると、そのまま一度病院の中にある売店へと向かった。そしてその途中、中庭にふと目を向けると。そこには那智さんが、車椅子に乗った男の子と話をしている姿が見えた。
わたしの足は、自然と那智さんのいる中庭へと向いていた。たぶん本当に無意識だったとは思う。
……だけど、那智さんのその姿を一目でいいから見たくて、足を向かせているみたいだった。
「大丈夫。先生が必ず、はる君を治すから。先生を信じて?」