【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。
那智さんは、優しくはる君という男の子に話しかけていた。
「うん!先生、約束だよ!」
「うん。約束」
そしてはる君と那智さんは、指切りげんまんを交わしていた。
「先生、またね!」
「うん。頑張って」
「うん!」
はる君はお母さんらしき人に車椅子を押され、そのまま立ち去った。
その姿を、那智さんはずっと見つめていた。
「……え、朱鳥さん?」
「お疲れ様です。那智先生」
「え、先生?」
「だって那智さんは、小児科の先生でしょ?」
「あ、ああ……。まぁ、そうだね」
那智さんは、少しだけ照れているのか顔が赤くなっているような気がした。
「那智さん、聞きましたよ。那智さんはすごい手術を成功させてるんですよね? さっき、産婦人科の野山先生から聞きました」
野山先生は、わたしを担当してくれている産婦人科の先生だ。
「いや、そんなことないよ。……俺はただ、一人でも多くの患者を助けたい一心でやってる。ただだけだよ」