【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。
「……そうなんですね」
わたしは、近くにあるベンチに腰掛けた。そして那智さんは、わたしの隣に座り、そのまま言葉を続けた。
「さっきの車椅子に乗ってた子」
「え?」
わたしは那智さんの方を向いた。
「さっきの車椅子に乗ってた子、はる君って言うんだ。年齢はまだ8歳だ。……はる君は、今重い心臓病を煩っているんだ」
「……そうなんですね」
「はる君の心臓病を治すには、心臓移植しか方法がないんだ。俺だって出来ることなら、今すぐにでも手術をしてあげたい。……だけど心臓を提供してくれるドナーが見つからなくて、はる君は手術することも出来ないんだ。ドナーはいつも順番待ちで、それがいつやってくるのかも分からないんだ」
「………」
わたしは何も言えなかった。ううん、なんていってあげればいいのか分からなくて、口を開けなかった。
「はる君は、もう入院してから3年になる。一度はドナーが見つかったものの、心臓の大きさが合わなくて、手術は断念した」