【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。
「……それでもまだ、はる君は諦めてないんだ。絶対に生きるんだって、ずっと願っている」
「……那智、さん」
「……悔しいよ。こうして目の前に患者がいるのに、救うことも出来ないなんて。……すごく、悔しい」
那智さんはか細い声でそう言うと、下を向いて顔を伏せてしまった。
「……大丈夫、ですか?」
わたしは言葉が見つからなくて、それしか言うことが出来なかった。
「……すまない。朱鳥さんにこんな話、しても仕方ないね」
「いいえ。……わたし嬉しかったです」
「え?」
「那智さんのそんな弱々しい姿見たの、初めてだったから……。そんな顔するんだなって思って、嬉しかったです。……だって今の姿って、わたしだけに見せてくれたんですよね?」
「……朱鳥、さん?」
わたしはカバンから赤ちゃんのエコー写真を取り出すと、それを那智さんに見せた。那智さんは目を丸くして、そのエコー写真を見ていた。
「朱鳥さん……これ……?」