【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。




 わたしはそれを聞いて、心底心が痛んだ。そして何よりも、涙を止めることが出来なくて……。

 那智さんはそんなわたしに、泣いてくれてありがとうと言ったんだ。 もちろん、那智さんの想いや悲しみは、誰にも消すことは出来ないかもしれない。
 だけどわたしは、そんな時でも那智さんに笑ってもらえるような結婚生活にしたいと、その時思ったんだ。 
 
 少しでも笑顔になってほしくて、少しでも悲しみを止めることが出来たら。そんな思いがわたしの中にはあった。
 
 例え今のご両親の養子だったとしても、わたしには那智さんという一人の存在が、わたしの存在を大きく変えていることを知っている。

 だからこそ、那智さんのために何でもしてあげたいと思った。那智さんが少しでも悲しい思いをしないように、そばにいて支えていきたいって。 

 「……那智さん、わたし」

 「ん?」

 「わたし、那智さんの笑った顔が本当に好きなんです。……だから、ずっと笑っていてください」


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