【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。
「俺のために、そこまでしなくていい。朱鳥に無理をさせて何かあったら……。俺はすごく辛くなってしまう」
那智さんは、わたしに語りかけるようにそう言ってくれた。だからわたしは、那智さんの手を握って、「那智さん、ありがとう……」と呟いた。
「いいんだ。朱鳥への配慮が足りなかったのがイケなかったんだ。……本当にすまない。 これからは、何でも遠慮なく言ってくれ。俺が出来ることはなんだってやるよ」
那智さんは、わたしの手を握り返してくれて、優しくそう微笑んでくれた。
「……はい。ありがとうございます、那智さん」
わたしは改めて、那智さんの妻になれたことを感謝した。那智さんのその優さが、その笑顔が、その温もりが。わたしの辛い心を落ち着かせてくれる。
「朱鳥、トマトなら食べれるんだよな?」
「え? あ、はい……」
なんだろう……?
「俺が朱鳥のために。朱鳥のためだけに、トマトスープを作るよ。 味に自信はないけど、良かったら食べてくれる?」