【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。
SIDE那智
〈那智目線〉
「はーい。じゃあちょっと、チクッとするからね?」
男の子の左腕の血管に注射の針を刺していく。男の子は一瞬痛そうな顔をしていたけど、終わると腕を押さえて、泣かずに「ありがとうございました」と言った。
「痛かったのによく頑張ったね?偉いぞ?」
男の子の頭を撫でると、男の子は嬉しそうにお母さんと一緒に笑って診察室を出ていった。
これだから俺は、小児科の医者を辞められない。どれだけ大変で、どれだけキツイ仕事だとしても、この仕事は俺にとって誇りだ。少しでも患者が笑顔になってくれれば、それだけでもう嬉しい。
「神山先生、はる君の血圧、先程まで少し高かったですが、安定してきています」
「……そうか。引き続き、よろしく頼む」
「はい。それと、野山先生が呼んでましたよ?」
「野山先生が?」
「はい。ちょっと患者さんのことで、気になることがあると仰ってましたけど……」
「気になること?」