その行為は秘匿
駅の近くの喫茶店に寄り、2人で情報を整理した。
「いいか、遺体を持ち去ったのは、田中だ。」
「え!」
私は、飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。
「どうして…?だって診てた患者だよ?なんでそんなことするの。」
「それはまだ分からない。でも絶対そうだ。
田中の話し方をよく思い出せ。自分がずっと診ていた大事な患者が自殺したんだぞ?あんなに冷静に話せるか?泣くまではいかなくとも、声が震えたり、小さくなったりするもんだろ。」
言われてみれば確かに、彼は、少しだけ話すのをやめたときはあっても、すごく深刻な顔をしたり、話すのを嫌がるということは無かった。
「そして、その後の会話の内容も不自然だった。わざわざ校舎のことなんか聞くか?それに、夏は涼しくていいなんて、まるで入ったことあるやつの言い方だろ。」
精神科医が健康診断で学校に来るという可能性は極めて低い。たとえ、養護教諭の先生と親交があったとしても、わざわざ学校に行くほどではないだろう。となると、田中は別の理由で学校を訪れた。
その理由が、「―遺体の回収…。」
「俺は、田中について詳しく調べてみる。朱里のときほど苦労はしないはずだ。」
「私は、田部先生ともう一度話してみる。他にも何かあるかもしれない。」
真実があと少しで分かりそうな気がした。―

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