BLADE BEAST
「あ…いや、別に…」

『そ?』



なんて答えても、正直目の前にいるこの男の行動に意識が嫌でも向いてしまう。

ホチキス留めしてたんじゃないの?

出れば?って興味なさげに言ったのはそっちなのに。

何がしたいのか分からないと言いたげな私のことなんて知らないかのように飄々と髪を弄る。



『莉央?』

「え?…あ、何だっけ」

『何処行きたい?って話だよ』

「す、…涼しい、とこがいいかな」

『涼しいとこ?避暑地?そーだな…』



受話器の向こうには陽気な晄。

私の目の前には何くわぬ顔の眞紘。




なに、してんの?

ただ頬杖をついてクルクルと毛先を弄る。

たった一個の机を挟んで向き合うそれは、結構近いもので、それをまるで強調するかのようにギシッ…と音を立てて此方に寄ってきた。
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