BLADE BEAST
『おーい。莉央ー?』



晄に返事しなきゃ。

それなのに眞紘がまるで邪魔をするみたいに茶々を入れてくる。

交わされる視線。温度の感じられないミステリアスな瞳。

長いハチミツ色の前髪に隠れたそれは、確実に私へと向けられていた。




『ね…誰か、いるの?』

「…えっ……いや、」




何故か。眞紘がいる、とは言えなかった。

言ったって別に晄のことだから"そうなんだ"で終わるって分かってるけど、目の前の眞紘の雰囲気に呑まれてそれが出来なかった。

大したことはない。

ただ眞紘と日直で雑用を押し付けられているってだけ。そんでちょっと髪を触られてるだけなのに、眞紘の醸し出すものに私はいとも簡単に呑まれた。
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