BLADE BEAST
「あっ…あとで、またかけ直す」

『あ、雑用の邪魔しちゃった?ごめんね。また後で決めよっか』

「う、うん。それじゃ」




合う、視線。

一ミリも離さない、それ。

まるで自分の存在を私に敢えて教えているかのようなそれに、またしても眞紘という人間の謎が深まって。



『はーい。待ってるね〜』



プツリ。プープープー……。

電話を切れば、眞紘はスルリと髪から手を離した。


「…」

「…」


黙ったまま見つめ合う私達。

薄っすらと開けている眞紘の瞳には私の顔が映っていて。

カチッカチッと時計の針の音が響く中、無言の空気が私達を包み込む。


気まぐれ?

それとも何?


……解せない行為に、何から問えばいいか頭を悩ました、



「ねぇ、まひ──────っ、」



……のだけど、






私は再び、ゆっくりと目を見開いた。

乗り出すように腰を上げた眞紘と、彼に腕を押さえられている私には影が出来る。




カチ……、カチ……、響く時計の秒針。


封じられる言葉。────唇。

伏し目がちに私を見てくる眞紘の瞳はとんでもなく至近距離にあった。




謎極まりない。

突然すぎて何もできない。



涼しげな顔に、甘い甘いホワイトムスク。

────私はまた、眞紘に唇を奪われていたんだ。
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