BLADE BEAST
──────それから、閉じ終わったプリント冊子の山を教卓の上に置いてきて、私は眞紘がバイクを隠し置いているらしい場所までついていった。

よくもこんな場所を…というほどに上手い具合な死角。

こうした校則違反をも平然とやってしまうしまうのだから、玖珂 眞紘という人間がどれほどまでに飄々としていて変わり者なのかってことを思い知らされる。



「乗れる?」



しかもかなりの大型バイク。

これをどうやって操っているのかと疑問に思ってしまうが、やっぱり暴走族の幹部クラスともなると運転の方は手慣れているのか。

キーを挿し込むなり振り返ってくる眞紘は私にヘルメットを預けるとそんなことを尋ねてきた。



「…多分。でも、晄の後ろに乗る時にはいつも乗せてもらってるから、まだ一人で乗ったことないんだけど…」

「…」



"一人で乗れる"と言っても否が応でも抱き上げて乗せてあげたい性分なのか、自力で乗らせてもらえなかったから。

…なんて思って見上げれば、眞紘は黙ったまま此方を見てくるだけで。



蝉が鳴く。


少しジメッとした暑さの中、木々の影を浴びる眞紘は、


「うわっ」


私を無言で抱き抱えて後部座席に乗せやがった。
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