BLADE BEAST
「いやんっ、晄ったらぁ」
「穂波ちゃんココ弱いよね」
――例えば、私の“彼氏”が堂々と他の女と“よろしく”やってる場面を目撃してしまった時だとか。
「……」
私が扉の前で突っ立っていることにも気づきもしない男は、本人いわく質感に拘っているとかなんとかいうキングベッドの上で、女と熱烈に絡み合っている。
本当、最悪な状態ではなかったことが唯一の救い。
二人とも辛うじて“服は”着ていた。
普通なら激怒すべき? 正気なのって迫り寄るべき? それともビンタの一つくらいお見舞いすべき?
…って、考えてみてもここで私が労力を費やすメリットが何一つ感じられなかった。
それ以上でもそれ以下でもない。こんな光景を見たところで別に何も思わない。
彼氏とか彼女とか、恋愛だとかそんなもんはこういうもんだって私は理解をしている。
逆にそれが私にとっては当たり前なのだから、どうこう言うこともないっていうか。だから女の肩もとに顔を埋めている黒髪の男に――黙って目を向けた。