BLADE BEAST
「…正気?」

「ああ正気だ」

「私は晄の唯一の女ってわけじゃない」

「…ああ、そう言えばそうみたいだね」




そうみたい、……だね?


ピクリと眉を動かす私に、男は妙なことにその事実を改めて再確認したような顔をしていた。

あまりに的外れな反応。

まるでそれが私を呼び出した本筋ではないのだというように。







確かに。



晄は飽くまでも平等な愛を注いでる。

たまに私の方がいいって特別扱いとやらをしてくるようだが、その辺はあまり大差は無い。

もしかしたら私が拉致されたところでそこまで深い怒りを覚えることもないかもしれない。

他の女を拉致するのと同じように同じ程度で怒る晄なのだから、これといって敵側に多大な効果を与えることもない。

──────私もそう思う。





………だけど、


妙だ。





「けど……君で間違いない」





状況を飲み込めない私。

覗き込むようにして前かがみになる男。
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