BLADE BEAST
「…離してっ」

「ちょっとだけ。この暗闇だし、分かんねーだろ」

「…ふざっけんな!!」



腕を掴まれ、引きつけられる。

気持ち悪い煙草の香りがやけに鼻につき、周りから見えないようにするためか、私とそいつを囲おうと近づいてくる奴ら。

気色悪い。反吐がでる。

それでも女の力が敵うわけもなく、私はずるずると地面へと引っ張りこまれた。




味見?なんなの?

酔っていたからといって、私は何故こんなところにまんまとやって来たんだろう。

普段だったらシカトこいてたはずなのに。そうしたら………、とそこであのハチミツ色頭のことを思い出していた。




イチゴオレ。




"買ってきてやるから、待ってて"って、言ってくれたのに。

ほんの少しだけ、後悔の気持ちが胸の中を過っていった。





そんな時だった。少し遠くから、ザクザクと此方に歩いてくる足音が、興奮気味な男達には届かず、妙に冷静だった私だけに…聞こえてきたんだ。
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