BLADE BEAST
いや、続けてもらって構わないんですけど。
なんて私の気持ちは晄になど通じるわけがないことは一番に私が知っている。
一束落ちてきた黒髪を耳にかけて、もう一度ベッドルームの方に目を向ける私は、大層面倒くさそうな顔をしていたと思う。
「なんだ。来てたの? なら言ってよ」
「いや、どう見ても言える雰囲気じゃないでしょ、これ」
「何で? 俺、莉央だったら即お出迎えしたのに」
「いい。流石に悪いから、それは」
「何で?」
…何でって。
そこにいる嫉妬に塗れた女のことを言ってるっていうのに、と溜息を落とす私は“穂波ちゃん”と呼ばれていた彼女のことを一瞥する。
晄。
――宇喜多 晄≪ウキタ コウ≫は私の彼氏だ。
それも晄いわく、私は正式な彼女というものらしい。
晄ハーレムの中でも特に最高峰…らしく、現に晄はこうやって私だったら、とか私のためだったら、とかいうワードを多用する。
ほかに女がいたとしても、私への愛情ってやつはちゃんと感じている。それなのに極めてライトな関係。お互いに干渉しあわないし、束縛されることなんて全然ないから楽。
だからこれは非効率的なものでもなく、むしろ至極合理的な関係であって、今に至るのだけど…。
「ね、あっち行こ。あっち」
「…いや、だから」
“穂波ちゃん”どうするんだよ。