BLADE BEAST
「こらっ、やよい!走るの速いって!待ちなさい!」

「やだよ〜ん!ママが遅いの〜」

「ははっ…。やよいはパパに似て運動神経バツグンだな。このまま将来は陸上選手も夢じゃないなぁ」

「パパ!やよいでもアスリートになれるかな?」

「なれるさ〜?世の中になれないものなんて、ないんだぞ?パパはやよいの良いとこをよ〜く知ってるから、素直で頑張り屋。だから絶対になれるよ」





溜まり場に行く途中、街中でそんな会話をしている親子の後ろを通りかかった。

荒い息をして女の子を追いかけている母親らしい女が私の後方にして、その数十メートル先…ちょうど私のすぐ前にいる父親らしい男とその娘。




目を背けたいような、目を引いてしまうような、そんな光景だった。

そして思う。子供のこと、よく知ってる親なんてこの世の中にはどれくらいいるんだろうって。

きっとそんなにはいないんだと思う。素直に自分という存在を知っていてくれる存在なんて、ほんの一握りに違いなくて。



羨ましいだとか…そんなんじゃない。

寧ろしょうがないって思ってる。



そう───、全てもとからそうなることだったんだから。

あまり家に姿を現さないとしても、会話なんて更々しなくても、私のことなどこれっぽっちも気にしてはくれなくたって、それはもう今のご時世しょうがないこと。

愛されてるとか……感じたことも、ない。
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