BLADE BEAST

伸ばした手と。

ドクリ、ドクリ、と大きな心音を立てながら、私の頬から血が流れてゆく。

そのすぐ目の前に寄せられたカッターナイフに、その近くには煙草の残骸が散在しているのが見える。

さらにそこから数メートル。悍ましいほどの冷たい殺気を放って男に睨みをきかせている眞紘が立っている。

心底ブチ切れたような。

半面、余裕がないような。

私は、その姿を見て安心したのか、自分の軽率な行動に対して後悔しているのか分からない涙を流し、か細い声で彼の名前を呼んでいた。




「…何をしたって……見ての通りだけど?」




そんな私を面白がってか、必死になっている眞紘を見て面白がってか、男は私に跨ったままさらに前屈みになると喉元に刃先を向け出した。

クスクスと笑う狂った男。

────チクリ、とした痛みが走ると同時に、ほんの僅かに喉から血が流れ始めていることに気づいた。






「………てめえ……っ……!!!!!!」






怒りで震えた声。

眞紘は、普段とは打って変わった乱雑な口調で走りだそうと一歩踏み込んで、




「おっと。動かない方がいいよ?」




…それを、ハッとしたように止めてしまった。
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