BLADE BEAST
そんな私を母が抱き締めてきた。
「…好きだったのね…」
「……うっ…」
「私も、怒ってなどいない。…寧ろ、大口を叩いたのにとここまで責任を取ろうとする彼に、ぜひ莉央を任せたいと思っていたのだがな」
「……っ…ぁ、」
「素敵な人ね。最後まで頭を下げるのをやめなかった…。本当に莉央のことを想ってくれるんだって嬉しかったけれどその半面、母さんも切なくてたまらなかったわ」
「……っ…」
「莉央…今日はゆっくりお休み」
涙腺がはちきれたように崩壊してゆく。
せっかく、せっかく…恭平や豪太の前では我慢していたっていうのに。所々で浮かぶ眞紘の影だって、見ないようにと気をつけていたのに、全部無駄。
そんなこと、言い残していかないで。
私の心に重く残るだけ。
アイツの声が、温度が、香りが…蘇るだけだよ。
部屋に入れば、コルクボードにかかっている星のネックレスに目がいってまた切なくなった。
思わずそれを握り締めてベッドに横たわる私は、この部屋でアイツと過ごした時のことを思い出す。
一つ一つの言葉が、焼き付いて離れない。
表情の些細な変化だって、こんなにも。
────また触って欲しい。
────また、キスしてよ。
どうしてネックレスをくれたの?
どうして────形に残るものを、くれたの。
これじゃ、いつまでもアンタのことが忘れられない。アンタの温もりが、染み付いたまま離れてくれないよ。