BLADE BEAST





そして"思い出"という言葉にまたハッとさせられる。

思い出というものは楽しいものなのかもしれない。

思い出とは形があればあるほど鮮明に思い出すことができるもの、なんだろう。



ふと、胸元にあるだろう星のネックレスを握りしめたのは、眞紘との"思い出"が、それとは真逆のとんでもなく切なくて苦しいものに変わってしまったからだ。

人間、悲しい記憶の方が根強く残るというけれど本当らしい。馬鹿みたいに──残ってる。




きっと、私はこの切なく苦しい"思い出"を引き摺って生きて行くしかないのかも。

悲しい思い出なんて割とゴロゴロあるけれど、どんなに消えにくいと言ったってだいたいは時間が経てば薄れて行く。

だけど、ずっと。ずっと。これだけは消えそうもない。




行き場がないそれを、どうすればいい?

そのままにする?

何をしても、力なんて沸いてこないのに。



グッと口を閉じて晄を見れば、やはり眉を下げて私のことを見下ろしてきていた。窓からの日差しを浴びて、触れることもせずにただ私の事を正面から見つめてくる。



────晄はきっと、温かい方の"思い出"を私にくれるのかもしれない。

今の晄は、それを埋めるために私のそばにいてくれるのかもしれない。



……そう、なのかな。
< 573 / 601 >

この作品をシェア

pagetop