恋とカクテル
#18 カシスソーダ
今日の日中、うっかりスマホを落とした。しかも一日外回りであちこちで歩いていたので、どこで落としたのか心当たりが多すぎた。
仕事が終わってから私用のスマホがないことに気づいて順に探して回ったけれどみつからず、運良く善良な人に拾われていることを願って会社用携帯から電話をかけてみたところ、七回ほどコール音が鳴ったのち『もしもし』と若い女性の声が聞こえてきた。
「すみません、そのスマホの持ち主です」
『あ、良かったです。テーブルの下からバイブの音が鳴ったのでびっくりしました』
「出ていただいてありがとうございます、そちらの場所をお伺いしてもよろしいですか?」
『中央通り沿いの交差点にあるカフェです』
「もし差し支えなければ、近くにいるので取りに行ってもいいですか?」
『わかりました。じゃあ待ってますね』
あそこか。と僕は急いで来た道をUターンした。確かに夕方事務仕事をするためにカフェに立ち寄った。私用スマホを使った覚えはないので、きっとパソコンを取り出すときに引っかかって落ちてしまったのだろう。何はともあれ同じ場所に留まってくれていてよかった。
店の前につくと息を整えて店内に入り、自分が座った席に向かう。するとボブヘアーの若い女性が「あ」という顔をした。
「すみません、先ほどお電話させていただきました、新庄と申します」
「こんばんはー。はい、スマホ。画面割れてなくて良かったですね」
女性はにこやかに笑うと、僕にスマホを手渡してくれた。ありがとうございますと言って受け取ったが、この場合どう礼をすればいいのだろうか。カフェだし、コーヒーでも一杯ご馳走するのがちょうど良いか。
「え、いいですよ~。たいしたことはしてません」
「いえいえ、知らない電話に出ていただいたことがありがたいので」
「悩んだんですけど、会社携帯って表示されていたので持ち主さんの可能性が高いかなって思って」
「とても助かりました。やはり一杯ご馳走させてください」
「でも、もうコーヒーは飲みましたしねえ。あ、お仕事ってもう終わってますか?」
「はい、今日はもう終了です」
「じゃあ、一杯付き合ってもらえませんか?」
そう言って彼女は先ほどよりもさらににっこりと笑った。
仕事が終わってから私用のスマホがないことに気づいて順に探して回ったけれどみつからず、運良く善良な人に拾われていることを願って会社用携帯から電話をかけてみたところ、七回ほどコール音が鳴ったのち『もしもし』と若い女性の声が聞こえてきた。
「すみません、そのスマホの持ち主です」
『あ、良かったです。テーブルの下からバイブの音が鳴ったのでびっくりしました』
「出ていただいてありがとうございます、そちらの場所をお伺いしてもよろしいですか?」
『中央通り沿いの交差点にあるカフェです』
「もし差し支えなければ、近くにいるので取りに行ってもいいですか?」
『わかりました。じゃあ待ってますね』
あそこか。と僕は急いで来た道をUターンした。確かに夕方事務仕事をするためにカフェに立ち寄った。私用スマホを使った覚えはないので、きっとパソコンを取り出すときに引っかかって落ちてしまったのだろう。何はともあれ同じ場所に留まってくれていてよかった。
店の前につくと息を整えて店内に入り、自分が座った席に向かう。するとボブヘアーの若い女性が「あ」という顔をした。
「すみません、先ほどお電話させていただきました、新庄と申します」
「こんばんはー。はい、スマホ。画面割れてなくて良かったですね」
女性はにこやかに笑うと、僕にスマホを手渡してくれた。ありがとうございますと言って受け取ったが、この場合どう礼をすればいいのだろうか。カフェだし、コーヒーでも一杯ご馳走するのがちょうど良いか。
「え、いいですよ~。たいしたことはしてません」
「いえいえ、知らない電話に出ていただいたことがありがたいので」
「悩んだんですけど、会社携帯って表示されていたので持ち主さんの可能性が高いかなって思って」
「とても助かりました。やはり一杯ご馳走させてください」
「でも、もうコーヒーは飲みましたしねえ。あ、お仕事ってもう終わってますか?」
「はい、今日はもう終了です」
「じゃあ、一杯付き合ってもらえませんか?」
そう言って彼女は先ほどよりもさらににっこりと笑った。