仮面夫婦だったはずですが妊娠したら、カタブツ社長は新妻への愛を抑えきれない。
《咲良 side》
「こんな時間まで起きていたのか?」
茅那ちゃんとご飯に行ってから一ヶ月。私と蓮司さんとの関係は変わらなかった。毎日、蓮司さんを朝見送ってお買い物に行ってお昼ご飯を少し食べて……夕食の支度をする。その繰り返しでつまらない。
「……あ、れ蓮司さんっ! も、もうこんな時間!?」
「ずっとここで寝ていたのか?」
やってしまった……ご飯も作ってない。こんな時間まで余裕で寝て、ご飯も作ってないなんて。
「ごめんなさいっ……今から、作ります!」
「はぁ……もういい」
蓮司さんはため息をつきジャケットを脱いだ。呆れられたかな、彼が仕事に専念できるように生活を提供しなくてはいけないのに……私は。
「咲良、冷蔵庫の食材使ってもいいか?」
「えっ……いいですけど、何をされるんですか?」
「ん? 秘密だ。咲良は座ってなさい」
蓮司さんはシャツを腕まくりすると手を洗い、人参やジャガイモに玉ねぎを取り出し慣れた手付きで皮を向いた後にリズム良く包丁で切っている音が聞こえてきた。そして、鍋で炒めている音が聞こえて「うわっ!」「なんでこうなるんだ……」と彼の声が聞こえて不安になりキッチンを見る。すると、とても必死な顔で料理を作っていてとても新鮮だ。
「咲良、いいよ……自信はないけど」
そう言った蓮司さんをよく見ると私の花柄のエプロンを掛けていてなんだか可愛く感じた。