仮面夫婦だったはずですが妊娠したら、カタブツ社長は新妻への愛を抑えきれない。
蓮司さんは感情を滅多に顔には出さないのに、私が驚いて目を見開いていたからか彼が驚いたようだ。表情は変わらないが、一瞬だけ瞼がピクッと動いた。
「……いや、蓮司さんが私の名前を呼んでくれたのは初めてだったので。すみません」
「謝らないでいい。俺こそ……すまなかった」
「あ……はい、ご飯急いで用意します」
私は、キッチンに向かうと手を洗ってから煮込んでいたハンバーグをお皿に盛りつけてテーブルに置いた。
「いただきます」
彼は、フォークとナイフでハンバーグを一口サイズに切り口に運ぶ。
「美味しいよ」
「あ、ありがとうございます」
私は、幼い頃から料理を習っていた。お母さんからは「旦那様のお役に立てるように、しっかりなさい」と言われ続けていた。
そのおかげか、和食や洋食だけではなく中華やお菓子、パンなど幅広く作れるようになった。